知的財産権とは
知的財産権とは、人の知恵から生み出された発明やデザインといった「形のない財産」に対する権利のことです。
知的財産権は大きく分けて、
といった3つに分類され、各カテゴリには特有の法律や保護の仕組みが存在します。
情報化社会において、知的財産権の基本を理解しておくことは非常に重要です。
知的財産権の概要
知的財産権は、創作や発明によって生み出された無形の財産に対する権利を指します。
この権利は、特定のアイデアやコンセプトが他人によって不正に使用されるのを防ぐ役割を果たします。
例えば、音楽やプログラムのコード、デザインなどが該当します。
知的財産権の重要性
知的財産権は、クリエイティブな活動や技術開発を促進するための重要な枠組みです。
この権利によって、創作者や発明者が適切な利益を得ることができ、さらに新しい発明や創作が生まれることを奨励します。
知的財産権の保護方法2種
知的財産権の保護方法には、無方式主義と方式主義の二つがあります。
方式 | 該当する権利 | 説明 |
---|---|---|
無方式主義 | ・著作権 | 申請しなくても権利が発生する。 |
方式主義 | ・特許権 ・商標権 | 権利を保護するためには申請が必要。 |
知的財産権の基本的な考え方
知的財産権に関しては、他社が創作したものを勝手に利用したり複製したりしてはいけないという基本的な考え方が重要です。
これを守ることで、創作活動や技術開発が活性化し社会全体の発展に寄与します。
1. 著作権とは創作物に対する権利
著作権は、創作物に対する権利を指します。
著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生します。
知らないうちに他人の著作権を侵害してしまうケースが多いため、基本を学んでおくことが必要です。
著作権の基本
著作権とは、創作者がその作品を使用する権利を持つことを意味します。
例えば、文章や音楽、絵画、プログラムなどが著作権の対象となります。著作権は、無方式主義に基づいており、創作物が完成した瞬間から自動的に発生します。
著作権法によって保護されるもの7つ
著作権法によって保護される創作物には、
- 本
- 取扱説明書
- 美術作品(絵画・彫刻・建築物・デザインなど)
- 音楽
- プログラム
- 写真・映像
- データベース
といったものが含まれます。
名称 | 説明 |
---|---|
本 | 著作権は、本の内容や表現を保護します。 例えば、小説やエッセイ、論文などが該当します。これにより、著作者は自身の作品が無断でコピーされるのを防ぐことができます。 |
取扱説明書 | 取扱説明書も著作権の対象です。 製品の使用方法や注意点を記載したものがこれに当たります。著作権により、他社が無断で同じ内容の説明書を使用することを防ぎます。 |
プログラム | プログラムは、コンピュータへの命令書として著作権で保護されます。 ソフトウェアのコードやアプリケーションの設計図が含まれます。著作権により、不正なコピーや改変を防止します。 |
美術作品 | 美術作品には、絵画、彫刻、建築物、デザインなどが含まれます。 これらの作品も著作権によって保護され、無断での複製や改変が禁止されます。 |
音楽 | 音楽作品も著作権の対象です。 作曲や歌詞、演奏が保護されます。著作権により、無許可での利用やコピーが防がれます。 |
写真・映像 | 写真や映像も著作権の対象です。 撮影した画像やビデオがこれに該当します。著作権により、他人が無断で使用することを防ぎます。 |
データベース | データベースは、コンピュータのデータを蓄積している場所であり、これも著作権で保護されます。データの集積や整理に関する権利が認められます。 |
特に取扱説明書、プログラム、写真の定義を覚えておくと良いでしょう。
著作権法によって保護されない3つ
一方で、著作権法によって保護されないものも存在します。
- プログラム言語
- アルゴリズム
- プロトコル
といった3つです。
名称 | 説明 |
---|---|
プログラム言語 | プログラム言語は、コンピュータへ命令を伝える言葉であり、著作権法の対象外です。 基本的なルールや文法に相当します。 |
アルゴリズム | アルゴリズムは、コンピュータが計算を行う際の手順や方法です。 これも著作権の対象外であり、基本的な考え方として扱われます。 |
プロトコル | プロトコルは、プログラム言語を使用する際の特別な約束や規則です。 これも著作権の対象外であり、基礎的な概念として理解されます。 |
プログラム言語やアルゴリズム、プロトコルは基本的な考え方として著作権法の対象外です。
2. 産業財産権
産業財産権とは
産業財産権とは、産業分野に関する権利です。
産業の発展を目的とする権利であり、特許庁が管轄しています。
会社が開発した発明やデザイン、ブランドなどに対する権利を指します。
これは個人ではなく、主に会社が開発した技術やブランドを保護するための権利です。
産業財産権の基本
産業財産権は、産業の発展を促進するために制定された権利です。
この権利は、
- 特定の技術やデザイン・ブランドを保護し
- 他社が無断で利用することを防ぎます。
これにより、企業は安心して新しい技術やデザインを開発し、ブランドを築くことができます。
産業財産権と著作権の違い
産業財産権と著作権には大きな違いがあります。
- 著作権は文化の発展を目的としており、文化庁が管轄しています。
- 産業財産権は産業の発展を目的としており、特許庁が管轄しています。
また、著作権は創作物を創作した時点で自動的に発生しますが、産業財産権は権利を得るために申請が必要です。
権利 | 申請の必要性 | 主な対象者 |
---|---|---|
著作権 | 不要 | 個人 |
産業財産権 | 必要 | 企業 |
産業財産権の種類
産業財産権は主に以下の4種類に分かれます。
種類 | 対象 |
---|---|
特許権 | 新しいことを発明した人(企業)に与えられる独占的な権利。高度な発明のみに与えられる権利。 特許権を得るには特許庁に出願し、厳しい審査を通過する必要がある。 |
実用新案件 | 商品の経常などの考案を保護する権利。特許権を得るには「新規性」が必要だが、実用新案権では不要。 物事をより便利にするアイディアがあれば認められる。 |
意匠権 | 物品のデザインを保護する権利。 |
商標権 | 自社の商品と他社の商品とを区別するためのトレードマークやサービスマークなどのマークを保護する権利。 |
3. その他の権利
その他の知的財産権には、営業秘密や不正競争防止法に関連する権利が含まれます。これらの権利も企業活動において重要な役割を果たします。
営業秘密とは次の3つの条件を満たす情報
営業秘密とは、特定の条件を満たす情報に対する権利です。営業秘密として保護されるためには、次の3つの条件を満たす必要があります。
条件 | 説明 |
---|---|
秘密管理性 | 秘密として管理されている情報。 「マル秘」と書かれた書類や機密保持契約書で指定した書類など。 |
有用性 | 技術上または営業上で役に立つ情報。開発実験の結果データや顧客情報など。 |
非公和性 | 一般的に知られていない情報 |
なお、
- 脱税情報
- 不正取引の記録
などは、法律で保護すべき正しい事業活動ではないため営業秘密には該当しません。
不正競争防止法とは
不正競争防止法は、営業秘密を守るための法律です。
この法律は、ライバル会社同士による不正な競争が行われないようにするために制定されました。
不正競争防止法に違反する行為には、次のような事例があります。
項目 | 説明 |
---|---|
営業秘密の不正取得 | 他社の営業秘密を不正に取得すること |
コピープロテクトを外す装置の提供 | 不正なコピーを防止するためのプロテクトを外す装置を提供すること |
他社の商品名に似たドメインの不正取得 | 他社の商品名に似たドメインを不正に取得すること |
知的財産権の有効期限
知的財産権には有効期限があります。
この有効期限が切れると、誰でもその著作権やアイディア、サービスなどを利用できるようになります。
しかし「商標権」だけは有効期限を更新することが可能です。
ビジネスモデル特許
ビジネスモデル特許とは、ITを利用した新しいビジネスモデルに対する特許権です。
これにより、企業は独自のビジネスモデルを保護し、競争優位を確立することができます。
ビジネスモデル特許の例
最も有名なビジネスモデル特許の一つに、Amazon社の「1-Clickで今すぐ買う」があります。
これは、ワンクリックで商品を購入するという革新的なビジネスモデルを特許として認められた例です。
ビジネスモデル特許のポイント
ビジネスモデル特許は、ITの進歩によって認められるようになった比較的新しい特許です。
ビジネス上のアイディアをコンピュータやインターネットを使って実現することができる場合に適用されます。
これにより、企業は独自のビジネスモデルを他社から守ることができます。
その他の重要な用語
知的財産権に関連するその他の重要な用語には、
- 肖像権
- パブリシティ権
- 使用許諾契約
- クロスライセンス
- パブリックドメインソフトウェア
- オープンソースソフトウェア
などがあります。
これらの用語も知っておくことで、知的財産権に関する理解が深まります。
用語 | 説明 |
---|---|
肖像権 | 自身の肖像(容姿や姿態)をみだりに利用・公表されない権利 |
パブリシティ権 | タレントやスポーツ選手などの有名人の氏名や肖像が、商品の販売などを促進するなどの経済的価値がある場合に、その価値を本人が独占できる権利。 例えば、有名なスポーツ選手の写真を勝手に撮影して販売するとパブリシティ権を侵害することになる。 |
使用許諾契約 | 著作権だけでは規制できないことを利用者との間で取り決める契約 |
クロスライセンス | 知的財産権を持つ者同士が、お互いに相手の権利を利用できるようにすること |
パブリックドメインソフトウェア | 著作権が放棄されているか、存在しないソフトウェア |
オープンソースソフトウェア | ソースコードが公開されていて、改良や再配布が許可されているソフトウェア。ソースコードとは、コンピュータ言語で書かれた「コンピュータへの命令文」なお、著作権は放棄されていない。 |
まとめ
産業財産権とその他の権利について理解することは、現代のビジネス環境において非常に重要です。
産業財産権は、産業分野における発明やデザイン、ブランドを保護し、企業の競争力を維持するために欠かせません。
また、営業秘密や不正競争防止法などのその他の権利も企業活動において重要な役割を果たします。
ビジネスモデル特許やその他の知的財産権に関する用語を理解し、適切な知識を持つことで、企業は法的リスクを回避し、競争優位を確立することができます。
- 特許権とは、高度な発明に与えられる権利
- 実用新案権とは、高度でない考案に与えられる権利
- 意匠権とは、デザインに与えられる権利
- 商標権とは、マークに与えられる権利
- 不正競争防止法とは、営業秘密を保護する法律
- ビジネスモデル特許とは、ITを活用したビジネスモデルに与えられる権利
- 特許法とは、ビジネスモデル特許を保護する法律
- パブリシティ権とは、有名人の写真を勝手に撮影し販売することなどを禁止する権利
- クロスライセンスとは、権利者同社がお互いに使用を許諾すること