本記事では、「導入した情報システムを経営に役立てるために必要なこと」として、以下の用語について解説します。具体的なキーワードとして、
- データマイニング
- 情報リテラシー
- BI
- データウェアハウス
- デジタルディバイド
といった情報について取り上げます。
BIとデータウェアハウス
Bl(ビーアイ:Business Intelligence)とは、
- 自社に蓄積されているデータを分析して、
- 経営の意思決定に役立てようとする手法や技術です。
以前は、BIを行うには専門的な知識が必要でしたが、現在では経営者や一般社員といったアナリスト以外の人でも簡単にデータ分析が行える「BIツール」が多数用意されています。
データウェアハウス
データウェアハウスとは、意思決定に役立てるためのデータの集まりです。 直訳すると「データの倉庫」です。
具体的には、ERPやCRMなどのシステム内にあるデータを取り出して、データウェアハウスに蓄積します。データウェアハウスに集約されているデータを用いて分析を行います。
通常、ERPシステムやCRMシステムに保存されているデータは、以下の理由で最適化されています。
- データの量が増えすぎないようにするため
- 処理の速度が遅くならないようにするため
- 不要なデータを順次削除している
一方、データウェアハウスに保存されたデータには、以下の特徴があります。
- 基本的に更新や削除を行わない
- 古いデータから有益な情報が得られる可能性があるため
- すべてのデータが時系列で保存されている
この点が、ERPシステムやCRMシステムのデータと、データウェアハウスのデータの最大の違いです。
ビッグデータとデータマイニング
ビッグデータとは、従来のデータベース管理システムでは扱いきれないほど、大量で複雑なデータの集まりです。
一般的に、ビッグデータには以下の3つの特徴があります。この3つの頭文字をとって「3V」と呼ばれています。
- データの量が大きい(Volume)
- データの更新頻度が高い(Velocity)
- データの種類が多様(Variety)。テキスト、静止画、動画、センサーからのデータ、決済データなど
このように、大量で頻繁に更新される多様なデータを分析することで、従来の分析方法では見つけられなかったデータの傾向や関連性を発見できるようになります。
しかしその分析は簡単ではなく、技術的な面やデータの収集、保管、解析処理などで多くの課題が残っています。
データマイニングとは
データマイニングとは、大量に蓄積されたデータの中から、有益な情報や知見を抽出するための技術や手法の総称です。
データマイニングの目的は、隠れたパターンや相関関係、トレンドを見つけ出し、意思決定や予測、戦略立案に役立てることです。
「マイニング」という言葉は、本来「鉱山で金や鉱石を掘る」という意味がありますが、データマイニングではこれを比喩的に用いて、膨大なデータの中から価値ある情報を見つけ出す作業を指しています。
データマイニングには、統計解析、機械学習、人工知能などの手法が用いられ、さまざまな分野で活用されています。
用語 | 説明 |
---|---|
テキストマイニング | 文字列を対象としたデータマイニングのこと |
データサイエンス | 統計学や機械学習などを利用してデータを分析する学問。データ分析を行う研究者や技術者のことを「データサイエンティスト」という |
ゲーミフィケーション | ポイントやアイテムの獲得といったゲーム要素をゲーム以外の商品やサービスに応用して顧客がその商品やサービスを使い続ける動機付けを行うこと |
情報リテラシーの習得の重要性
情報リテラシー(Information Literacy)とは、情報を活用する能力です。
「リテラシー」の本来の意味は「読み書きする能力」ですが、「情報」と組み合わせることで「情報を集めたり、発したりする能力」や「コンピュータやインターネットなどのITを使う能力」という意味になります。
デジタルディバイド
デジタルディバイド(Digital Divide)とは、情報リテラシーの違いによって生じる、経済的・社会的な格差のことです。
「ディバイド」は「格差」という意味です。
デジタルディバイドを解決するには、情報リテラシーを向上させる必要があります。
デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)とは、デジタル技術を使って、経営や人々の生活を変革することです。
従来、デジタル技術は事業を効率化するための補助的な道具でした。
一方、デジタルトランスフォーメーションは、事業そのものをデジタル技術に合わせるように作り替える取り組みです。
例えば、タクシーには運転手が必要ですが、AIなどによって自動運転技術が実現すれば、運転手が必要なくなるかもしれません。
そうなると、タクシー業界は大きな変化を求められることになります。
なお、英語では「Transformation」を「X」の一文字に省略することがあります。
これは、接頭辞の「Trans」に「交差」という意味があるからです。このため、デジタルトランスフォーメーションは「DX」と略されます。
システム企画
システム開発の手順は大きく5つあります。
良いシステムを作るために、これらの手順は細かく標準化されています。 特に「ソフトウェアライフサイクル」について詳しく紹介します。
ここまでのまとめ
下図は「経営環境」を表した模式図です。
これまでに読み進めてきた内容を思い出しながら、全体像を再確認してください。
>模式図.png
経営環境
SWOT分析で経営環境を外部環境と内部環境に分類しました。
また3C分析でも
- 外部環境(Competitor:競合、Customer:顧客)と
- 内部環境(Company:自社)
に分類されます。
経営
経営環境の中で競合他社よりも優位な立場を築くための方法を、経営資源ごとに解説しました。
限られた経営資源を駆使して、経営目標を達成するために会社を営むことを「経営」といいます。
- ヒト(HRM、OJTなど)
- モノ(生産管理、CADなど)
- カネ(損益分岐点、損益計算書など)
- 情報(知的財産権など)
事業
経営は複数の「事業」から構成されます。
事業に関しては、事業戦略を立てるために
- BSC(バランススコアカード)
- CSF(重要成功要因)
- KPI(重要業績評価指標)
などを学びました。
業務
事業は複数の「業務」から構成されます。
業務に関しては、
- 業務プロセスや
- DFD(データフロー図)
などを学びました。
システム
業務は「システム」と「手作業」から構成されます。
システムに関しては、次のようなさまざまなシステムを学びました。
- 経営層が使うシステム(CRM、SCM、ERPなど)
- 生産部門が使うシステム(CAD、CAM、JITなど)
- 販売部門が使うシステム(SFAなど)
- このシステムをどのようにして作るのか
- なぜこの用語を学ぶ必要があるのか
といった視点を持って各用語について学ぶと良いでしょう。
システム開発の登場人物は4人
システム開発を行う際に登場する4人の登場人物について解説します。
本章以降を読み進めるうえでは、この4人の役割をきちんと理解しておくことが非常に重要です。
4人の登場人物は以下のとおりです。
- 経営者
- 情報システム部
- ユーザー
- ベンダー
通常システム開発は
経営者の命令を受けて、
情報システム部が中心となって
開発業務を行います。
情報システム部が自社開発することもありますが、多くの場合はベンダー(システムインテグレータ)と呼ばれるシステム開発会社に開発を委託します。
また、完成したシステムを利用する部署(または人)のことをユーザーといいます。
ソフトウェアライフサイクルプロセス
ソフトウェアライフサイクルプロセス(Software Life Cycle Process:SLCP(エスエルシーピー))とはソフトウェアの企画、要件定義、開発、運用、保守までの一連の活動であり、それらの活動内容を定義した国際規格です。
ソフトウェアライフサイクルプロセスはISOで標準化されています(ISO/IEC 12207)。
この他にも、システムのライフサイクルプロセスを規定した「システムライフサイクルプロセス」という国際規格もあります(ISO/IEC 15288)。
共通フレーム
共通フレームとは、ソフトウェア開発とその取引を適正化するために、それらのベースとなる作業項目を1つひとつ定義した本です。
簡易的に表現すると「システム開発に関わる人たちが、同じ言語で話ができるように、用語などの定義を統一した本」であるといえます。
意思疎通を統一化する共通フレーム
システム開発には、さまざまな作業や技術、手法があります。
これらの用語の定義(意味や内容)が統一されていないと、関係者(経営者、ユーザー、情報システム部、ベンダー)の間で誤解が生じたり、意思疎通ができず、後々トラブルが起こる原因になります。
これは誰にとっても良いことではありません。
そこで、こういった誤解を可能な限り未然に防ぐために、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主体となって「共通フレーム」という本を作成しています。
本書執筆時点の最新版は「共通フレーム2013」です。
共通フレームと2つのSLCPの関係
先述したソフトウェアライフサイクルプロセス(ISO/IEC 12207)と、システムライフサイクルプロセス(ISO/IEC 15288)は、それぞれ、「ソフトウェア」と「システム」に関する規格ですが、システムはソフトウェアを含む概念です。
そのため、この2つの規格は重なり合う部分も多いです。
そこで、この2つの規格をまとめ、さらに日本独自のアレンジを加えたガイドラインを作ることになりました。
用語 | ISO / IEC | JIS | IPA |
---|---|---|---|
システム ライフサイクル プロセス | 15288 | X0170アレンジ | 共通フレーム |
ソフトウェア ライフサイクル プロセス | 12207 | X0160アレンジ |
それが「共通フレーム」です。
ソフトウェアライフサイクル5つのプロセス
ソフトウェアライフサイクルは次の5つのプロセスに分類されます。
- 企画
- 要件定義
- 開発
- 運用
- 保守
プロセス | 説明 |
---|---|
企画 | 経営目標を達成するためにシステムに必要な要件を集め計画を立てるプロセス |
要件定義 | 業務を行うのに必要な要件を決めるプロセス |
開発 | 実際にシステムを作成するプロセス |
運用 | システムの本番への移行や、システムを安定的に稼働させるプロセス |
保守 | 不具合の修正やソフトウェアのアップデートなどを行うプロセス |
まとめ
ここまで紹介した内容を再確認し、導入した情報システムを経営に役立てるために必要な知識を整理しましょう。
BI、データウェアハウス、情報リテラシー、デジタルディバイド、デジタルトランスフォーメーション、システム企画、システム開発の登場人物、ソフトウェアライフサイクルプロセス、共通フレーム、そして5つのプロセスについて理解することで、効率的に情報システムを活用し、評価することができるようになります。
- ビッグデータとデータウェアハウスの違いは、ビッグデータのほうが「データ量が多い」「データの更新頻度が高い」「データの種類が豊富」の3つ
- データマイニングとは、データを分析して有用な情報を抽出することである
- ゲーミフィケーションとは、ゲーム要素を用いて、自社サービスを使ってもらえるように顧客を動機付けすること
- 情報リテラシーとは、情報を活用する能力である
- デジタルディバイドとは、情報リテラシーの違いによって生じる、経済的・社会的な格差のことである
- デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術を使った変革のこと
- ソフトウェアライフサイクルプロセス(SLCP)とは、ソフトウェアの企画、要件定義、開発、運用、保守までの一連の活動であり、それらの活動内容を定義した国際規格である
- 共通フレームとは、ソフトウェア開発とその取引を適正化するために、それらのベースとなる作業項目を1つひとつ定義した本である