業務の中で
- 技術開発戦略は、研究開発部(Research & Development:R&D)が中心となって進める戦略であり、
- 研究開発部では「将来のヒット商品を生み出すための研究や開発」が行われています。
このような業務は利益に直結しませんが、継続的に競争優位な状況を維持するためにとても重要です。
なお、技術開発戦略は機能別戦略のうちの1つとして、本記事ではさまざまな技術開発戦略の手法を解説していきます。
オープンイノベーションとは社会を変革する商品やサービスを生み出すこと
オープンイノベーションとは、技術革新という意味で組織外の知識や技術を積極的に取り込むことで、社会を変革するような商品やサービスを生み出すことを指します。
イノベーションは「技術革新」という意味です。
ひと昔前は、多くの企業は製品開発を自前で行っていました(クローズドイノベーション)。
クローズドイノベーションのメリットは
- 「ノウハウが外部に漏れない」
- 「儲けが全て自社のものになる」
などがあります。
しかし、製品の開発にスピードと品質が求められる現代では、すべての工程を自前で担っていては完成までに時間を要します。
そこで、オープンイノベーションが注目されるようになりました。
ハッカソンとは期限内に制作した製品の成果を競うイベントのこと
オープンイノベーションを実現する手法の1つに「ハッカソン」(Hackathon:Hack + Marathonから成る造語)があります。
ハッカソンとは、
- 開発者が一堂に集まってアイデアを出し合い、
- 短期間のうちに製品を作り、
- その成果を競う
上記のイベントのことを指します。
これにより、短期間で革新的なアイデアや製品が生まれることが期待されます。
APIエコノミーとは他社サービス連携で自社サービス価値向上を狙う仕組みのこと
APIエコノミーとは、他社のサービスを利用して、自社だけでは実現できない価値を生み出す仕組みのことを指します。
APIエコノミーの代表例にGoogle社が提供する「Google Maps」の活用があります。
これにより、他の企業は自社のアプリやサービスにGoogle Mapsを組み込むことで、顧客に対してより便利で価値の高いサービスを提供することができます。
また、PayPalやAmazonなどもAPIエコノミーを活用しています。
魔の川・死の谷・ダーウィンの海4つの壁
商品が競争に勝つまでには主に4つの段階があります。

それぞれの段階と段階の間には難関があり、それらの難関を乗り越えると、最終的にヒット商品として大きな売上を生む商品になります。
以下はその4つの段階です。
- 研究段階
- 開発段階(形になるか)
- 事業化段階(発売されるか)
- 産業化段階(ヒットするか)
またこれらの段階にはそれぞれ
と呼ばれる難関があります。
STEP1. 魔の川
魔の川は、
- 技術の変化が川の流れのように速く、
- 製品の開発段階に進まなければ、
- これまでに費やした研究コストが「水の泡」になる
という観点から「川」に例えられました。
研究段階でのアイデアや、技術が実際に製品として形になるまでには多くの障壁があります。
この段階を乗り越えるためには、研究の初期段階から市場のニーズを考慮した開発が必要です。
STEP2. 死の谷
続く死の谷は、多額の開発コストをかけた製品が事業化しなければ、経営資金が底をついて経営破綻することから「死」に例えられました。
開発段階で製品としての形が見えてきても、それを実際に市場に出すための資金やリソースが不足すると、ここで多くのプロジェクトが失敗します。
この段階をクリアするためには、資金調達やリソースの確保が重要です。
STEP3. ダーウィンの海
最後に、ダーウィンの海は、事業化された商品が競合他社との競争で自然淘汰されることから、進化論を唱えた「ダーウィン」の名前が付けられました。
市場に出た製品が競争に勝ち抜くためには、他社よりも優れた品質やサービスを提供し続ける必要があります。
この段階では、マーケティング戦略やブランディングが重要な役割を果たします。
その他の障害. キャズム
商品が市場でシェアを拡大する際に障壁となる「溝」のことを「キャズム」(Chasm)といいます。
「イノベーター理論」と呼ばれる理論では、顧客が新商品を受け入れる早さによって、その顧客を
- 「イノベーター」
- 「アーリーアダプター」
- 「アーリーマジョリティ」
- 「レイトマジョリティ」
- 「ラガード」
といった5つに分類します。
キャズムは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある溝を指します。
用語 | 説明 |
---|---|
イノベーションのジレンマ | 業界トップの企業がイノベーションよりも既存製品の改良ばかりに注目するために新興市場への参入が遅れて失敗を犯すこと |
デザイン思考 | データや経験だけで判断せず、ユーザーの意見を取り入れて人間を中心としてイノベーションを生み出す手法 |
ビジネスモデルキャンパス | 新規事業を立ち上げる際に考えなくてはならない9つの要素を図式化したもの |
リーンスタートアップ | 最低限の商品・サービス・機能を持った試作品を短いサイクルで作りユーザーの反応を見ながら改善をしていく手法。名称はリーン生産方式に由来する |
ロードマップとは技術予測手法の1つ
ロードマップ(Technology Roadmap:技術ロードマップ)とは、技術予測手法の1つであり、いつどのような技術が実現しそうであるのかを時間軸で表した表のことです。
横軸に時間、縦軸に技術を配置するのが一般的です。
なおロードマップは市場動向や技術動向によって大きく変化するため、定期的(1年ごとなど)に更新する必要があります。
まとめ
技術開発戦略の基本とその計画について理解を深めることで、企業は将来のヒット商品を生み出すための効果的な戦略を立てることができます。
オープンイノベーションやAPIエコノミーといった手法を活用し、魔の川、死の谷、ダーウィンの海といった難関を乗り越えることで、競争力のある商品を市場に提供することが可能です。
また、ロードマップを活用することで、将来の技術動向を予測し、効果的な開発計画を立てることができます。
- オープンイノベーションとは、組織外の知識や技術を積極的に取り込んで技術革新を起こすこと
- ハッカソンとは、開発者が一堂に集まってアイディアを出し合い、短期間のうちに製品を作り、その成果を競うイベント
- APIエコノミーとは、他社のサービスを利用し、自社だけでは実現できない価値を作ること
- 魔の川は、研究段階と開発段階の間にある難関
- 死の谷は、開発段階と事業化段階の間にある難関
- ダーウィンの海は、事業化段階と産業化段階の間にある名kなん
- 商品が市場でシェアを拡大する際に障壁となる溝のことを「キャズム」という
- イノベータ理論では、顧客を「イノベータ」「アーリアダプタ」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5つに分類する
- ロードマップは、技術開発戦略のために作成する(経営者も理解する必要がある)。横軸に時間、縦軸に技術を配置する