企業活動における経営戦略(ストラテジ)について解説します。
本記事では、
- 経営戦略の基本から
- SWOT分析や
- PPM(Product Portfolio Management)
といった戦略的な経営をサポートする知識を幅広くご紹介します。
効果的な戦略を練り、ビジネスに活用していきましょう。
経営戦略とは
経営戦略(Strategy)とは、ライバル会社に勝つための戦い方を指します。
経営戦略のことを単に「戦略」と呼ぶこともあります。
この「戦略」という言葉は軍事用語の一つで、経営に持ち込まれたのが始まりと言われています。戦国時代を生き抜くために軍事戦略を立てたように、激しい市場競争を生き抜くために様々な経営戦略が立てられています。
戦略の起源と経営への応用
戦略という言葉の起源は軍事用語にあります。
戦国時代や戦争の際に用いられた軍事戦略が、現代のビジネスの場に応用され、経営戦略として発展しました。
例えば、競争の激しい市場において、企業は自社の強みを活かし、ライバル企業との差別化を図るための戦略を立てます。
経営戦略の目的
経営戦略の主な目的は、市場での競争優位を確立し、企業の持続的成長を実現することです。
企業は、限られたリソースを効率的に活用し、最大限の成果を上げるために戦略を策定します。
これにより、企業は市場の変化に柔軟に対応し、持続的な成長を目指すことができます。
戦略の重要性
経営戦略は、企業の成功に欠かせない要素です。
戦略を持たない企業は、市場の変化や競争に対応できず、持続的な成長が難しくなります。
逆に、明確な戦略を持つ企業は、競争優位を確立し、安定した成長を遂げることが可能です。したがって、経営戦略の重要性は非常に高いと言えます。
3つの経営戦略
経営戦略は、大きく3つに分類されます。
- 企業戦略(Corporate Strategy)
- 事業戦略(Business Strategy)
- 機能別戦略(Functional Strategy)
企業戦略で企業全体の方向性を決定
企業戦略は、企業全体の方向性を決定する戦略です。
例えば、事業A・事業B・事業Cの3つの事業を持つ事業部制組織の場合、企業戦略は各事業の総合的な方針を決定します。
この戦略は、企業のビジョンやミッションに基づき、長期的な成長を目指します。
事業戦略で事業部門競争優位を確立
事業戦略は、個々の事業部門が競争優位を確立するための戦略です。
事業Aが競争力を高めるための具体的な方針を策定し、市場でのシェアを拡大するための戦略を立てます。
事業戦略は、企業戦略を補完し、企業全体の成長に寄与します。
機能別戦略とは企業の各機能戦略
機能別戦略は、企業の各機能(マーケティング、製造、R&Dなど)の戦略です。
例えば、マーケティング部門が製品のプロモーション戦略を立てる場合、この戦略は機能別戦略に分類されます。
機能別戦略は、事業戦略を支援し、企業全体の目標達成に向けた具体的なアクションを計画します。
SWOT分析とは
SWOT分析(SWOT Analysis)とは、企業戦略を立てるために、会社が置かれている経営環境を
- 「Strengths(強み)」
- 「Weaknesses(弱み)」
- 「Opportunities(機会)」
- 「Threats(脅威)」
といった4つに分類する手法です。
各用語の頭文字をつなげて「SWOT」と呼びます。SWOT分析を行うことで、自社を取り巻く経営環境を把握することが可能です。
SWOT分析の目的
SWOT分析の目的は、企業の内部および外部環境を評価し、戦略的な意思決定を支援することです。
内部環境の強みと弱み、外部環境の機会と脅威を明確にすることで、企業はリスクを管理し、機会を最大限に活用するための戦略を策定できます。
SWOT分析の手法
SWOT分析では最初に、各項目を以下のように分類します。
- 内部環境:自社の努力では変えられる項目
- 外部環境:自社ではコントロールできない項目
例えば「特許の取得」は自社努力によるものとして内部環境に分類します。
一方「円高」は自社でコントロールできないものなので外部環境に分類します。
次に、分類項目が会社にとって「良い影響を及ぼすのか」または「悪い影響を及ぼすのか」を判断し、下記のように分類します。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| Strengths(強み) | 内部環境であり、かつ良い影響を及ぼすもの |
| Weaknesses(弱み) | 内部環境であり、かつ悪い影響を及ぼすもの |
| Opportunities(機会) | 外部環境であり、かつ良い影響を及ぼすもの |
| Threats(脅威) | 外部環境であり、かつ悪い影響を及ぼすもの |
SWOT分析結果の具体例
先の分類をSWOT分析すると以下のように当てはまるでしょう。
- 「特許の取得」は内部環境であり、かつ自社にとって良い影響を及ぼすもの = Strengths(強み)
- 「円安」は外部環境であり、輸出企業は良い影響を及ぼすので = Opportunities(機会)
- 逆に輸入企業であれば悪い影響を及ぼすもの = Threats(脅威)
| 項目 | 良い影響(メリット) | 悪い影響(デメリット) |
|---|---|---|
| 内部環境 | Strengths(強み) ・たくさんの特許 ・良いブランドイメージ | Weaknesses(弱み) ・社員のモチベーションの低下 ・離職率の増加 |
| 外部環境 | Opportunities(機会) ・自動車需要の増加 ・円安 | Threats(脅威) ・競合会社の増加 ・他社製品の価格低下 |
SWOT分析の活用による企業への影響
SWOT分析を活用することで、
- 企業は自身の強みを最大限に活かし、
- 弱みを克服するための具体的な戦略を立てる
といったことが可能です。
また、外部環境の機会を捉え、脅威を最小限に抑えるための対策を講じることもできます。このように、SWOT分析は企業の戦略的な意思決定において重要な役割を果たします。
PPM(Product Portfolio Management)とは
PPM(Product Portfolio Management)とは、自社資源を投下すべき製品や撤退すべき製品を分析するための手法です。
PPMでは具体的に自社製品を
- 「花形」
- 「問題児」
- 「金のなる木」
- 「負け犬」
といった4つに分類して分析を行います。
PPMの目的は企業資源の最適化
PPMの主な目的は、企業が限られた資源を最適に配分し最大の利益を得ることです。
各製品の市場成長率と市場占有率を評価し、戦略的な投資判断を行うことで企業は成長機会を捉え、リスクを管理することができます。
PPMの分類構成表
PPMでは以下のように分類されます。
| 名称 | 意味 |
|---|---|
| 花形(Stars) | 市場成長率が高く、市場占有率も高い製品。競合に勝つために多額の投資が必要ですが、大きな利益を生み出す可能性があります。 |
| 問題児(Question Marks) | 市場成長率は高いが、市場占有率が低い製品。将来的に成長する可能性がありますが、現在は投資が必要です。 |
| 金のなる木(Cash Cows) | 市場成長率が低いが、市場占有率が高い製品。追加の投資が不要で、安定した利益を生み出します。 |
| 負け犬(Dogs) | 市場成長率も市場占有率も低い製品。撤退を考慮すべきです。 |
PPMの活用方法・概念表
PPM概念は以下のように表されます。
| 軸 | 説明 |
|---|---|
| 縦軸 市場成長率 | 全体の売上の伸び率。製品が発売されてからしばらくは市場成長率が高く、製品が消費者に行き渡ると市場成長率が低くなります。 |
| 横軸 市場占有率 (相対市場シェア) | 市場における自社製品の占有率(シェア)。占有率は高ければ高いほど有利にビジネスを展開できます。 PPM上では市場占有率の高い左側に「花形」と「金のなる木」があります。 |

花形製品(Stars)
花形製品とは、市場成長率が高く、かつ市場占有率(シェア)が高い製品です。
競合に勝つためには多額の投資が必要ですが、一番占有率が高く、大きな利益を生み出します。
人気(利益)が高いけどギャラ(投資)も高い製品と言えるでしょう。
ここの競争に勝つことで「金のなる木」になります。
問題児な製品
問題児な製品とは、市場成長率が高く、かつ市場占有率(シェア)が低い製品です。
問題児に分類された製品は市場成長率が高いため、競合に勝つために多額の投資が必要です。
しかしその割に市場占有率が低いため、利益をあまり生み出さない製品です。ここでの競争に勝つと「花形」になります。現時点では問題児(お金ばかりかかってて利益が少ない製品)ですが、将来的に成長する可能性がある製品は投資を継続する、製品の育成期間とも考えられます。
金のなる木
金のなる木とは、市場成長率が低く、かつ市場占有率(シェア)が高い製品です。
ここに分類された製品は市場成長率が低いため、追加の投資は必要がありません。また、市場占有率が高いため、大きな利益を生み出します。
会社にとって最も手に入れたい製品であり、問題児を花形に育て、花形を金のなる木に育てることで、利益を獲得できるようになります。ま
た、獲得した利益を使い、問題児や花形のために投資を行います。ただし、金のなる木も全ての消費者に製品が行き渡ると需要が減るため、最終的に衰退し負け犬になることもあります。
負け犬
負け犬とは、市場成長率が低く、かつ市場占有率(シェア)が低い製品です。こ
こに分類された製品は市場成長率が低いため、投資の必要がありません。
しかし、一番占有率が低いため利益をほとんど生み出さず、今後にも期待できない製品です。
会社は負け犬となった製品から撤退する必要があります。
花形や問題児が競争に負けると負け犬になる、と覚えておくと良いでしょう。
まとめ
経営戦略について
- SWOT分析
- PPM(Product Portfolio Management)
といったマネジメント手法を理解することで、企業は競争力を高め、持続的な成長を目指すことができます。
経営戦略の基本から、具体的な分析手法まで、幅広い知識を持つことが重要です。
企業はこれらの戦略ツールを駆使し、市場での競争優位を確立し、成功へと導くことが期待されます。
- SWOT分析を行うことで自社を取り巻く経営環境を把握できる
- SWOT分析における内部環境とは、自社の努力で変えられる項目
- SWOT分析における外部環境とは、自社ではコントロールできない項目
- PPMの縦軸は市場成長率
- PPMの横軸は市場占有率
- PPM分析の花形・問題児には投資を続ける
- PPM分析の金のなる木・負け犬には追加投資は不要