ネットワークで利用されるハブ・Wi−Fiルータの違いを先に言っちゃいます。
- ネットワークハブ:複数ケーブルを集約して複数機器へ接続する装置
- Wi-Fiルータ:ネットワーク間の接続を行う機器
もともと「ハブ(Hub)」は車輪の中心部のことを指す言葉です。Wi−Fiルーターと違いネットワーク接続する機能はありません。
本記事では、ネットワークハブとWi-Fiルータの違い・役割・活用法・注意点について、図解を交え深掘りして紹介します。
ネットワークハブ・ルータの違いネットワークハブの基本的な概要と役割
ネットワークハブとWi-Fiルータの違いはズバリ、
集線か分配か
といった違いです。
ハブの役割は各機器の回線をまとめる集線装置
ネットワークハブは、
- 複数の機器のデータを集めて一つの回線にまとめる役割
を担っています。端的に言えば、
- 複数のネットワーク機器を接続し
- 受信データを全てのポートに送信する
といった動作ですね。
ハブを導入することで、ネットワーク内のデータの流れをより多くの端末まで届かせることができます。
ハブを利用することで「Wi-Fiルータ→PC×1台」から「WiFiルータ→ハブ→PC×5台」といった感じで接続台数を増やすことが可能です。
でもデータを複数に分けたら、データの中の情報も減ったりしちゃうんじゃない?
ハブによって送信するデータが分けられた時、データの発信力は弱くなってしまうのでしょうか?
ハブはリピータやスイッチの機能を備えている
実はネットワークハブは、受け取ったデータを送信するときにデータ信号を強化する機能を備えています。
具体的な機能は以下の2つです。
- リピータ:信号を強化する機能
- スイッチ:データを特定のポートに送る機能
リピータについて詳しく
スイッチについて詳しく
以上のような機能をネットワークハブは備えているため、ネットワークの信号品質を劣化させずにデータ通信することが可能なんですね。
ネットワークハブってすごいんだな
ネットワークハブ・ルータの違いネットワークハブの特徴
ネットワークハブの特徴は以下の通りです。
- ネットワークの中継機器であり複数端末を中継している
- スター型ネットワークの中継元である
- リピーターハブとスイッチングハブのうち、大抵はスイッチングハブを指す
スター型ネットワークは、以下のようなイメージでしたね。
このスター型ネットワークの中心部分に該当する端末がネットワークハブです。
ネットワーク上でデータ信号が送られる中継役として、中心的な存在を担っています。
関連記事:ネットワークの基礎を初心者向けに図解で解説。接続形態6種と基本構造のまとめ
-
ネットワークの基礎を初心者向けに図解で解説。接続形態6種と基本構造のまとめ
ネットワークの意味・接続形態・種類について勝手に解説していくわ。 SEO対策 文字数も図解も多めになってるぜ 簡易目次 ...
続きを見る
このネットワークをつなぐLANポートはRJ-45といった規格で統一されています。
RJ-45とは何?ネットワーク内のハブ接続における重要性
RJ-45はネットワークの「プラグ」と「ジャック」を担う規格で、LANケーブル先端のコネクタを称してRJ型と呼びます。
RJは「Registered Jack」の略称でありプラグ・ジャックはそれぞれ、
- RJ45型プラグ:オス型のプラグ
- RJ45型ジャック:メス型のジャック
といった表現で称されています。
RJ-45は通信用コネクタ規格の1つとして、ハブ・ルータ端末などのデータを繋ぐ重要な主要規格と言えるでしょう。
ネットワークハブの機能3つ
ネットワークハブの機能として特徴的なものは以下3つが挙げられます。
- データ転送
- シグナル増幅
- ブロードキャスト
3つの機能について以下に概要をまとめました。
機能 | 説明 |
---|---|
データ転送 | ハブには複数ポートがあり、デバイス間でデータを転送します。 |
シグナル増幅 | 受信したデータの信号を増幅し、強度を回復させます。(リピータ) |
ブロードキャスト | 受け取ったデータを接続先デバイス全てに送信します。(ブロードキャスト方式) |
特にネットワークハブはデータを中継するだけの役割であり、データの内容や宛先については把握しません。
またネットワークの効率性やセキュリティの面で制約があります。
というのも、ハブからは不要なデータも全デバイスに送信されるため、データが正しく受信されなかった際は通信が無駄になりパフォーマンスに影響が出ることもあるためです。
ネットワークハブの機能って、便利な機能だけどそれだけデメリットもあるんだね
ところでネットワークハブって、ポートの数以上にネットワーク接続する端末は増やせないのかな?
カスケードでネットワーク接続端末を増やせる?
ネットワークハブは、カスケードを行うことで最大接続端末数を増やすことができます。
カスケードとは、
- ハブとハブを接続すること
といった意味を指します。
ただし、ネットワークハブのイーサネット規格によってカスケード可能な段数は決まっているんですよね。
イーサネット規格 | 転送速度 | カスケード接続の接続段数制限 |
---|---|---|
10BASE-T | 10 Mbps | 最大4段 |
100BASE-T | 100 Mbps | 最大2段 |
1000BASE-T | 1 Gbps | 最大1段 |
以上のように、イーサネットの規格に合わせたハブを使ってカスケードすることで、ネットワークに接続する最大の端末台数を増やすことが可能です。
カスケードって便利な技術があるんだね
しかし、カスケードには注意点もあります。
要注意!カスケードにはLANケーブルの使い分けが必要
カスケードを行う際に注意に注意したいのが、LANケーブルの使い分けです。
LANケーブルには種類があり、
- UTPケーブル(無遮断)
- STPケーブル(シールド付)
と分かれます。
ケーブルタイプ | 特徴 |
---|---|
UTPケーブル(無遮蔽ツイストペアケーブル) ※Unshielded Twisted Pair ケーブル | ノイズ保護がないが、一般的な環境で使用される。 Cat5、Cat5e、Cat6、Cat6aなどカテゴリによって最大転送速度や伝送距離が異なる。 |
STPケーブル(シールドツイストペアケーブル) ※Shielded Twisted Pair ケーブル | 外部ノイズや電磁干渉から保護される。 高いノイズ耐性が求められる環境で使用される。 カテゴリによって最大転送速度や伝送距離が異なる。 |
カスケードの用途で使用するケーブルは「UTPケーブル」と呼ばれるケーブルを利用する必要があります。
UTPケーブルはさらに以下2種類に別れ、カスケード対象端末も異なってきます。
- ストレートケーブル
- クロスケーブル
ストレートケーブル・クロスケーブル2種類の、カスケード可能な機器内訳は以下のとおりです。
カスケード接続 | ストレートケーブル | クロスケーブル |
---|---|---|
スイッチとコンピュータ | ○ | |
スイッチとルータ | ○ | |
コンピュータとハブ | ○ | |
スイッチとスイッチ | ○ | |
スイッチとハブ | ○ | |
ルータとルータ | ○ | |
ハブとハブ | ○ |
上記のとおり、ハブ同士をカスケードさせるには、クロスケーブルを利用する必要があるんですね。
ハブとハブを繋いでカスケードさせたいときは、UTPケーブルのクロスケーブルが必要ってことだね。
とはいっても、基本的にネットワークハブには「AUTO-MIDX」と呼ばれる機能が付与されており、ストレート・クロスケーブルどちらのLANケーブルが接続されていても通信できる設定がなされています。
カスケード接続におけるLANケーブルの接続について、そこまで心配する必要はないでしょう。
ネットワークハブ・ルータの違いルータの役割と活用法
ここまで、ネットワークハブは「集線(装置)」といった内容でしたね。
ハブの役割に対し、Wi-Fiルータは「分配」の役割を担っています。
ルータの基本的な役割と機能
Wi-Fiルータの役割はネットワークの分配です。
ネットワークハブと役割と異なり、データ(TCPプロトコル)のヘッダ情報を読取り特定のデバイスへデータを送受信することが可能です。
Wi−Fiルータの基本的な機能として、
- パケットのヘッダ情報を解析し適切な転送先を決定する
- IPアドレスを識別して適切なルータやデバイスにパケットを転送する
といった、効率的なネットワーク通信を実現する機能を備えます。
参考:TCP / IPをわかりやすく各プロトコル・IPアドレスとの違いを図解で解説
-
TCP / IPをわかりやすく各プロトコル・IPアドレスとの違いを図解で解説
TCP / IP はインターネット通信をする際の決まりごと。 プロトコルとしては IPプロトコル UDPプロトコル TC ...
続きを見る
ネットワークハブは、「繋がっている全てのデバイスに全てのデータを配信する」ことを踏まえると、Wi-Fiルータは繊細な機能を備えてるんだね
さらにWi-Fiルータは、ネットワークをセグメントで分けることが可能です。
ネットワーク分割や通信制御への活用法
Wi-Fiルータの活用法は何と言っても、ネットワークを複数のセグメントに分割することができること。
ネットワークハブではカスケードすることで、ネットワーク接続可能な端末を増やすことができました。
一方Wi-Fiルータでは、同じネットワークの中でA部門・B部門・C部門といったセグメントに分けた運用を可能とします。
またTCPプロトコルのパケット情報を読み取ることで、
- データ通信を制御する
- 且つ通信ロスを減らすことができる
以上の点も、Wi-Fiルータ機能の魅力の1つでしょう。
Wi-Fiルータの機能って改めてすごいな
Wi-Fiルータの役割は、それだけにとどまりません。ネットワークのセキュリティとも深く関係します。
Wi-Fiルータはネットワークのセキュリティを強化できる
インターネットとの通信において、Wi-Fiルータは
- ファイアウォール
- NAT(ナット:ネットワークアドレス変換)
などのセキュリティ機能を提供し、外部からの不正アクセスや攻撃からネットワークを保護します。
ファイアウォールとNATの機能詳細は以下のとおりです。
ファイアウォールの機能
ファイアウォールは、ホームネットワークのバリアです。
設定を有効にすることで、ルータに送信される全てのデータをスキャンして脅威を凌いでくれます。
NATの機能
NAT(Network Address Translation)とは、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスを紐づけて変換する技術です。
インターネットからの受信データにプライベートIPアドレスを付与したり、送信データにグローバルIPアドレスを付与する機能です。
Wi-Fiルータはネットワークハブと異なり、単体でインターネット通信ができる端末です。
そのため、インターネット通信におけるサイバー攻撃に対してのセキュリティ機能が数多く備わっています。
Wi-Fiルータはインターネットから脅威から常に守ってくれてるんだな
ネットワークハブとWi-Fiルータ運用の注意点
ネットワークハブとWi-Fiルータ運用時の注意点を記載しておきます。
ネットワークハブ運用の注意点
ネットワークハブ運用での注意点はズバリ、
- データの衝突が起きること
この1点に限るでしょう。
ネットワークには全二重通信と半二重通信がありますが、リピータハブを使うことで全てのネットワーク通信が半二重通信となってしまいます。
半二重通信では、デバイスから発信されるデータ同士が衝突しやすくなり、衝突したデータは消失してしまう可能性があるため、リピータハブの導入は慎重に行わなければなりません。
Wi-Fiルータ運用の注意点
Wi-Fiルータ運用の注意点はズバリ、
- 無線によるセキュリティリスクの高さ
これが一番の注意点です。
Wi-Fiルータの場合、無線形式でネットワーク通信を行います。しかし、一度セキュリティを破られてしまうと、Wi-Fiにつながっている全端末の情報を抜き取られてしまうリスクも含んでいます。
放っておくことで、Wi-Fiのタダ乗りや乗っ取りなどの被害に遭う可能性も出てくるため、任意のパスワード設定や定期更新など対応や注意が必要です。
ネットワークハブとルータの役割と違いについてのまとめ
ネットワークハブとWi-Fiルータの違いとしては、
- ネットワークハブは基本的なデータ中継機能を持っている機器
- Wi-Fiルータはデータ転送やセキュリティや無線通信も可能な機器
といったように、用途が全く異なることが分かりましたね。
最後に同じ項目で各機器の機能を比較してみました。
機能・役割 | ネットワークハブ | Wi-Fiルータ |
---|---|---|
データの中継 | 受信したデータをすべてのポートに中継する | 受信したデータを適切なデバイスに転送する |
ブロードキャスト | 受信したデータをネットワーク内のすべてのデバイスに送信する | 受信したデータをネットワーク内のすべてのデバイスに送信する |
衝突の検出 | 同時にデータを送信するデバイスの衝突を検出する | 衝突の検出と回避を行う |
データの増幅 | 受信したデータを増幅して再送信する | データの増幅は行わない |
スイッチング能力のなし | 受信したデータを特定のデバイスにのみ転送する機能はない | 受信したデータを適切なデバイスに転送する |
IPアドレスの割り当て | IPアドレスの割り当て機能はない | IPアドレスをデバイスに割り当てる |
NAT(ネットワークアドレス変換) | NAT機能は備えていない | NATを使用してプライベートIPアドレスをパブリックIPアドレスに変換する |
セキュリティ機能 | セキュリティ機能は備えていない | ファイアウォールや暗号化などのセキュリティ機能を備える |
無線通信 | 無線通信機能を持たない | Wi-Fiによる無線通信を提供する |
ネットワーク構築の用途で最適な機器選択ができるよう、参考になれば幸いです。